恋心ミルフィーユ

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ツイッターじゃ吐ききれない妄言をまとめていくよ

ハイスクールランウェイ、メイクは私が一歩進む魔法!

読みました!?ねえ奥さん!?このハイスクールランウェイって読切読みました!?

本当によかったです。朝から情緒死んだよね…。ジャンプ+くん、読切にすごく力を入れるようになって、本当に尖った良い作品が多く生まれてるから大好きよ。

最近だともちろん『ルックバック』は言わずもがな、『アイスクリームの夜』や『汚れた血』のような新時代の百合作品もすごく好きだし、Aセクを描いた『私のアスチルベ』や、性徴を描いた『16歳の身体地図』などなど、本当に刺さる作品が多いんだよなぁ。…趣味の偏りがすごい!もちろんジャンプブランドということもあって『チーズインゴッドファザー』のようなギャグ作品も大好き。

 

そして今回更新の『ハイスクールランウェイ』、本当に刺さりました…。こういう話に救われる命があるんだよなぁ。まだ読んでない人はとりあえず読んでください!もう最高だから!私が推してるって時点でどういう作品かは察せるとは思うんですが、つまりそういうことです。すごく丁寧に描いてくれて、私としてもすごく嬉しいです。

ということで感想書いていきます。

 

変わりたいという気持ち

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この作品で最初にびっくりしたことなんだけど、尖ってないんだよね。

「え?あんたさっきジャンプ+の読切は尖ってる言うてたやん」ってツッコまれそうなんだけど、そういう意味じゃなくて、なんて表現したらいいのかな?全体的にすごく柔らかいです。

意外な方向に物語が急展開するわけでも、設定がぶっ飛んでるわけでもない。辛く苦しい話でもないし、割と淡々と進んでいく。読切としてインパクトを残しづらいという点ではマイナスになるんだけど、作品としてはむしろこっちの方がテーマとして良いんだよなぁ。

それを象徴するのが主人公の化野はるかさん。影で「お化け」だと陰口を叩かれる子なんだけど、無闇にいじめられっ子みたいなキャラにしないのがすごく意外でした。いじめられっ子が可愛くなって見返す!みたいな展開いくらでも出来るのに、安易にそんなことはしない。そういうことに主題をおかず『綺麗になりたいから綺麗になる』と、誰かじゃなく自分のために綺麗になるっていうのがすごく素敵だなぁ。それこそメイクの本質だよね。

 

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化野はるかこと、はるさん。どこにでもいる子なんだよね。別にいじめられてるわけでもないけど、かといって友達も別にいない。別に家庭環境に問題があるわけでもないし、言ってしまえばただの根暗。つまり私ですね!はい!

親とは普通に話せるのに、いざ外に出ると変に縮こまっちゃうというか、周りと歩調合わせられない感じとかまさしく。そういうふうにコンプレックスを持ったちょっと没個性な子だからこそ、自分自身を投影して読んじゃうんだよね…。家族との会話とか描き方とかすごく解像度高くて好き。

 

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メイクは自分自身を変身させる魔法。「誰か」に「何か」を言われることが怖くても、自分自身の好きを貫き通す。そうしてそういう自分が好きになる。メイクはそんな自分に一歩踏み出す勇気をくれる魔法だし、外側も内側もきれいにしてくれる。そのメイクの魅力が上から下まで作品内には詰まっていてすごく刺さりました。

特にはるさんは自分の身長にコンプレックスを持っていてそんな自分が嫌で、私も同じ悩みを持っているからずっと「わかる…」と頷いていました。コンプレックスは長所!とよく言うし、実際はるさんは高身長の素敵なモデルさんに勇気をもらってなりたい自分になる勇気をもらえたけど、私はまだです…。やっぱ色々と怖いです。

でも私も自分自身を受け入れて、ちゃんとなりたい自分に胸を張ってなることができるのかな?そんな勇気をはるさんから貰えました。

 

「私」を出す勇気

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そしてもう一人の主人公、ハルちゃん。ハルちゃんに関してはねぇ…もう…。あんまり深くは語るつもりはありません。私自身ジェンダーであれこれ悩んできた身なのですごく言いたいこといっぱいあるんだけど、主題と外れそうだから割愛!

でも、描き方がすごく良かったです。本当に物語の主軸が「メイク」「なりたい私」であるということもあってか、割と軽めではあるんだけど、それでもしっかりと触れていて。私としてはやっぱりあんまり騒いでほしくないし、それこそトランスジェンダーという内容に主軸を置いていない以上これだけで良かったなぁって。

漠ちゃんの記事でも書いたんだけど、本当にそういうジェンダー観って年々変わってきているからね。令和の今、こうやってカムしても冷やかしとかなく案外スッと受け入れてもらえるっていうのはむしろ解像度が高いのかも。はるさんのときにも書いたんだけど、むやみに属性をつけないからこそ出る引き算の良さっていうのがすごく上手く描けていて、そういうの大好きだなぁ。

まあ悠自体顔がいいしモテる以上、陰で何があるかはわからないけど、それでも下手に腫物に触るような感じにされなくてよかったなぁって、当事者としては思います。

 

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ハルちゃん、どちらかというとはるさんに勇気を与える立場というような描かれ方が強いけど、ハルちゃん自体もすごくはるさんに勇気をもらって、自分自身を変える事ができたんだよなぁ。それをファッションで描いているのが本当に上手い!

ハルちゃん、はるさんと最初会った時はかなり肌面積が少ない服装だったんだよね。ストッキング前提でコーデ組んでて、手袋までして、そして喉を隠せるハイネックに、肩幅を目立たせなくする大きい襟…。

もうめっちゃくちゃカバーしてる!

これは自分の体形でファッションに悩んだ人にしか伝わりにくいと思いますが、このファッション、まさしくなんだよね…。反動から超絶フェム系のかわいいを身につけるっていうのもすっごくあるあるで。だからこそコンプレックスを必死に隠そうとするっていうのも本当にわかる!

私も似たような感じというか、やっぱり肌ってそれだけでリード誘うからね…。手も足も出したくないもん。それが趣味なのか、それとも自分自身を守るためなのかは人それぞれだけど、ハルちゃんのその後を見たら後者だってすごく伝わります。

 

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だからこそのこの服!全然違う!

「本当の私」として学校に行くというのももちろんなんだけど、最初にはるさんと会った時とは全然違うんだよね。だってこれ男性の身体としてはめちゃくちゃ着にくい服装なんですから。

最終ページの服、まさしくこれがハルちゃんの着たい服だったんだろうなぁ。だってこのシースルートップス、肩幅出ちゃうもん!そして手袋やストッキングもせず、好きなサンダルを履いて。ハルちゃん自体男性の肉体としては華奢だし、漫画的表現っていうのもあるから自然に可愛く見えてるけど、実際にはかなり着にくいですよねこれ。

ただ単に「女性の姿として登校する」だけでなく、そこからさらに自分の「好き」を頑張って表現して、その勇気がハルちゃんに生まれてくれたのが本当に嬉しい…。最初に会った時は隠す事を主軸にコーデを組んでいたけど、多分登校する時はトップスに合わせてメイクも服も組んだんだろうなぁ。そういう勇気をもらえたのははるさんが一歩前に進むことができたおかげ!互いに互いを支えあった結果こうやって一緒に歩むことができて、本当におめでとうだよ。

 

おわりに

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本当に、こういう作品が世に出る様になってくれて嬉しいなぁ。やっぱり私みたいな人って理解されることなく拒絶されることが多い人種やし、フィクション作品でもこうやって触れる機会を与えてくれると言うのはすごく助かります。なんだかんだ色々説明するよりも、物語として楽しく見てもらえる方が良いよね。

そしてジェンダーだけでなく、もちろんメイクも!メイクってマンガじゃあまり取り扱われないテーマだし、メイクをしない男性からしたら知らない領分だもんね。それこそただ単純に顔に塗って見た目を整えるものってイメージしか持ってない人も多いと思うし。

私自身もちゃんとメイクするまで割とそう思っていました。でもメイクで一番変われるのって中身だよね。外側を整える事で、内側も自信がついてより一層可愛くなる。そしてそんな自分に自信をくれるメイク道具も当然めっちゃくちゃ可愛くて!なんか可愛い物をつかって自分がどんどん可愛くなるって本当に素敵なことなんだもん。その自分にしか伝わらないメイクの魅力がすごく上手く出力されていたからこその物語でした。

実際世の中にはこういう人が沢山います。はるさんのようにコンプレックスを抱えて自分に自信が持てない子も、ハルちゃんのように周りや親が怖くて自分自身を出せない子も。でもだからこそこの作品から勇気をもらって、前向きな気持ちになれる子が増えてくれると私としても嬉しいです。同じようにこの作品から私も勇気をもらえましたから!

はぁ~はよ帰ってメイクしたい!メイク道具持ってきてない!私ももっと可愛くなろっと。